次に、法人経営において重要な指標の一つである人件費率について申し上げます。法人として最優先で進めている「人材確保」は、支援の質を上げ、職員の一人ひとりがより良いパフォーマンスを発揮できる環境を整えるうえで欠くことができないものです。昨年、必要な人材の確保を進めた結果、4月当初164名だった職員数は本年1月当初で169名となりました。しかし、当然のことながら職員数の増加により人件費も増加し人件費率も上昇しています。しかし収入面でも要因として考えられるのが定員が確保できていないことと利用率が低迷している事業があることです。つまり、収入の伸び悩みが人件費の上昇をカバーしきれず、結果として人件費率の上昇につながっているということです。ちなみに昨年11月までの利用率は、けやきの村は生活介護が96.2%、就労Bと就労移行を併せた就労が79.7%、施設入所が97.1%、短期入所が45.2%、青松苑は生活介護が84.3%、施設入所が79.9%、静心園は生活介護が95.9%、施設入所が99%、短期入所が87.7%、桃の里は60%という状況です。利用率が90%以下の事業が多くなっています。以上のことから2023年度は、法人全体の最重要課題として定員の確保と利用率90%以上を新たな目標にしなければならないということを申し上げておきます。
2022年度において重点項目として掲げた内容について、これまでの取組みと今後の取組みについて申し上げます。
一つ目は、「人事考課、勤務評定制度の見直し」です。2022年度は、「人事評価制度検討委員会」を立ち上げ、新たな評価項目の内容等の検討を進めています。2023年度からの本格実施、2024年度からの給与への反映というタイムスケジュールで進めていきます。なお、人事評価制度においては、経営理念について職員一人ひとりが理解を深めることを前提に、目指すべき「理想の人財像」を具体的に描きます。そのため、「人事評価制度検討委員会」と並行して「経営理念浸透委員会」も走らせており、2023年度に具体的な取組みをスタートできるよう検討を重ねています。
二つ目は、「次世代を担う職員の育成と、若手の起用」です。2022年度において、S.Yワークスが開催している「福祉×経営カレッジ」に職員2名を参加させるとともに、社会福祉法人全国経営者協議会青年部会にも職員3名を参加させ、法人経営のトップの皆さんや県内、そして全国の若手職員とともに学びを深めてもらっており、確実に成果として現れております。2023年度も「福祉×経営カレッジ」には新たに職員を参加させ、次世代の人材育成に引き続き取組んでいきます。40年を経過した青松苑、静心園のハード面での充実をどのように行うのかと併せて新たな事業展開を見据えたとき、これからの数年間が非常に重要であると考えます。つまり、法人のトップとして目指すべき将来像を具体的にどう示すのか、そして、この期間に次世代を担う職員の育成と若手の経営部門への起用を進めるのかに、法人の未来がかかっているといっても過言ではありません。
三つ目は、「長期的な視点からの事業の展開」です。理事会等でも報告させていただいていますが、現在、新規事業の展開を検討しており、地域における障害福祉の拠点として機能できる法人を目指すべく取組みを本格化しなければなりません。法人として、現状の提供サービスを維持することが前提ではなく、明確な将来像を描きそして新たな事業展開分野に焦点を定め進めていきます。そして必要があればスクラップ&ビルドも含め地域が必要としている事業を展開していきます。
四つ目は、「支援の質の向上」です。意思決定支援を核とした権利擁護支援を充実させるためには、一人ひとりの職員が提供する支援・サービスの質の向上を図ることが必要となりますが、2022年度においては、残念ながら法人として十分な取組みをすることができませんでした。2023年度は、人事評価制度と両輪で支援の質の向上に向け、専門性の獲得、組織としての取組みを学ぶ機会をつくります。そして、職員には、学びを実践に活かす場を提供していきます。
一方、現在職員5名が参加している「第2期あすなろ塾」ですが、「福祉×経営カレッジ」を受講している2名にもアドバイザーで入ってもらい7月から毎月1回開催しています。いろんな意見、考えをもった職員が一つの目的を達成するため喧々諤々の議論をし一つの答えに集約していくプロセスを経験する貴重な機会となっています。また理事長と直接意見交換できる大切な機会ともなっています。12月27日には各施設長に活動の成果をプレゼンテーションしましたが、そのときの施設長との意見交換は貴重な経験になっていると思います。また、継続して進めている各施設における「改善」の取組みをさらに充実するため、理事長、常務理事、事務局長に各施設長も加え各施設を訪問する機会を設定します。これを機会に施設長には管理者という視点だけでなく経営幹部としての資質向上に向けて取組んでいただこうと思います。
五つ目は、「地域との連携、多機関との連携」です。現在、法人として連携している組織は、「福島県北地区障がい福祉連絡協議会」、「福島地域福祉ネットワーク会議」、「共生社会ふくしま実現協議会」があります。また法人独自に関係機関等との連携により実施している災害時の避難支援を地域として進める「中野地区避難支援推進会議」や法人の地域支援推進委員会が進めている「中野地区健康教室」や「いいざか子ども食堂『いっしょに』の運営支援」が具体的な実践例となっていますが、コロナ禍であってもさまざまな工夫をしながら連携を深めていく必要があると思っています。
私たち福祉に従事する者が目の前の支援を必要としている方々への支援をするのは当たり前のことです。私たちに求められていることは、地域の抱える課題を解決するために考え実践するということだと信じ、2023年度も新たな展開をしていきたいと思います。
法人の組織体制の見直しについてお話します。2024年度からの中長期計画とも関連してくるのですが、法人の組織体制の見直しを数年かけて段階的に行いたいと思っております。計画達成年度については2026年度末とし、けやきの村旧館、青松苑、静心園の増改築も含めた「地域に根差した社会福祉法人の実現」つまり「地域になくては困る法人」という目標を実現するためのロードマップとリンクしながら進めたいと思っています。
2023年度は、その第一弾として現在の法人事務局の上に常務理事、事務局長、各施設長で構成する「法人経営本部」を位置づけます。今まで施設長は自分の施設の運営管理を担うことを重要な役割としてきましたが、それ以上に必要なこと、重要なことは、法人けやきの村の経営を担う重要な役割を担うということです。今後訪れる財政難、人材難のなかで、社会福祉法人に求められることは多くなってきます。まさに施設長以上の幹部職員には、施設の管理運営責任者ではなく経営者として物事を考え、発言し、議論し、決定していくことが求められると思いからです。
いずれにしても人材の確保・育成は急務です。明日の法人のために必要な人材を確保し育成するためには、環境、研修そして経験という土台が必要です。2023年はその土台作りのため、今まで不十分だった環境を整えることに全力を注ぎ、優秀な若手人財を創造し、法人の未来図を描いていくことを職員の皆様にお伝えし、年頭の挨拶といたします。ありがとうございました。
令和5年1月4日